たまりば

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2015年08月16日

8月15日という日

今年は、7月が終わるころから、2冊の本を読み始めた。

1冊はチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ (長いっ!)著の『半分のぼった黄色い太陽』。
これは、一昨年だったか、友人の教えてくれて読んだものの再読。
著者は、1977年ナイジェリア生まれの女性。
物語の舞台は、ビアフラ戦争(ナイジェリア内戦)(1967-1970年)前後の、ナイジェリア。
人に恋して報われたり、報われなかったり、今の生活に満足したり、不満があったり、主人公たちの普通の生活を描かれている。
少しずつ、少しずつ、日常に戦争の影が落ちてくるのだが「心配することはない」と思っている。しかし、戦争は確実に彼らに爪を立てる。
一人の少年は、軍に強制徴用されかけるが、雇い主に助けられた。にもかかわらず、心を寄せる少女を、家の途中まで送っていき、帰りの夜道、もう少しで家に着くというところで、軍に連れ去られる。そこでは「最新の武器」だと信じていたものが、極めて原始的なものだったり、不運にも出くわした女性に非人道的な行いを強制される。
また、一人の女性は「隣町で何が買えるか見に行く」と言って、出かけたきり、戻ってくることはなかった。
この物語の怖いところは、日常が徐々に戦争という非日常にとってかわられるということだ。
そして、繰り返し現れるフレーズは「私たちが死んだとき世界は沈黙していた」。
無関心が戦争を引き起し、一層、残酷なものにする。

その、ビアフラ戦争にも取材に行ったのが、開高健。
もう1冊は、その開高健がベトナム戦争(1960-1975年)の際、1964年に朝日新聞社臨時特派員として戦時下の体験を綴った『ベトナム戦記』。

ここでも、戦場の最前線にいる者は、敵と、そして味方の無関心に傷つけられる。
「アメリカ人は本国で"豊かな社会"のなかに暮らしていて、無関心に支配されている」と言う米軍の少佐。155ミリ無反動砲が夜を裂き、土をふるわせるなか、彼は叫ぶ「おれたちは孤立してるんだ。だれにも知られず死んでゆくんだ。ごくわずかの人間にしか知られていないんだ!」
そして、その死者の数だって、信じられるわけではない。「戦死者、負傷者、行方不明者などの数は、発表者側に都合の良い数字に改ざんされる」し、裏付けをとる資料はない。
「だから“絶対確実”と断言できるものは、死体そのものしかない」

しかし、その死体になる、ならぬには格差がある。
金持ちの家では、子どもたちをフランスに留学させ、兵隊に行くのは、貧農の子どもたち。
「貧農の子どもが兵隊に行けは、いいのさ。兵隊に行けば、食いっぱぐれはないから」と言われ。

この『ベトナム戦記』は、TOKYO MXの番組『5時に夢中』で、小説家岩井志麻子が「ベトナムに行く時、必ず持参して読む。そして、必ず同じ部分で泣く」と紹介していたのをきっかけに読んだ。
その部分とは、地雷と手榴弾を運搬中に逮捕された20歳の青年の死刑が執行される。「青年といっても、やせて、細い首をしたほんの子供」な彼が、逮捕されなければ、運んでいた地雷と手榴弾は確実に人を殺していた。
開高と一緒にこの死刑執行の様子を見ていた新聞記者がつぶやく。「おれは、もう、日本へ帰りたいよ。小さな片隅の平和だけをバカみたいに大事にしたいなあ。もういいよ。もうたくさんだ」

しかし、今や「小さな片隅の平和だけをバカみたいに大事」にするには、交通や軍事技術の発達で「小さな片隅」は、世界からあまりにも近くなった。遠国の戦争に無関心でいることは、気づかないうちに、自分の喉元に刃物を当てられることになるやもしれない。
そして、戦争で、傷つき、涙を流すのは、一般庶民。
世界中の「小さな片隅」に、爆弾が落とされたり、銃器の音が響いたりせぬことを切に祈る、終戦70年目の夏。

なお、この記事は、昨日投稿予定だったのが、近しい親戚が、病院に救急搬送されたため、そちらの助っ人のため、1日遅れで投稿。
昨日の正午は、病室に持っていくものを用意しながら、そっと目を閉じて平和を祈った。

『半分のぼった黄色い太陽』 河出書房のサイトはこちら

『ベトナム戦記』 朝日新聞出版社のサイトはこちら
(自分が読んだのは、小学館の開高健全集 第11巻だが、現在はどうやら絶版のようだ )

『5時に夢中!』のサイトはこちら



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    Posted by エルダベリイ at 06:50│Comments(0)日々の徒然
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